遠隔診療の利用者数、前年比2.3倍に急増 地方医療の課題解決へ
2024年度の利用者は約580万人
総務省が7日発表した「情報通信白書2025」によると、2024年度における遠隔診療(オンライン診療)の利用者数は推計で約580万人となり、前年度の約250万人から2.3倍に急増したことが明らかになった。特に過疎地域や離島での利用が顕著で、地方医療の新たなインフラとして定着しつつある。
遠隔診療の利用増加の背景には、2024年度の診療報酬改定で初診からのオンライン診療が恒久化されたことや、高齢化により通院困難な患者が増加していることがある。また、通信環境の改善やスマートフォンの普及も利用者拡大を後押ししている。
70歳以上が最多の利用者層
年代別では、70歳以上の高齢者の利用が全体の42%を占め、最も多い利用者層となった。主な診療科目は、内科、皮膚科、精神科で、慢性疾患の継続的な診療や、薬の処方を受けるケースが中心だ。
地方における遠隔診療の活用例として、長崎県五島列島の事例が注目されている。本土の専門医による遠隔診療体制を構築したことで、島内の高齢者が専門的な医療を受けられる機会が大幅に増加。島外への通院にかかる時間的・経済的負担も軽減された。
課題も浮き彫りに
一方、課題も指摘されている。日本医師会が実施した調査では、医療機関の約35%が「対面診療と比べて診療の質の担保が難しい」と回答。また、高齢者のデジタル機器操作のサポート体制の必要性も挙げられている。
厚生労働省は今後、遠隔診療ガイドラインの見直しを行い、画像診断や専門医へのコンサルテーション機能の強化を図る方針だ。また、2026年度からは、AI問診システムと遠隔診療を組み合わせた「次世代型オンライン診療モデル」の実証事業も開始する予定で、医療DXの更なる加速が期待される。
- 記事提供
- NHK NEWS WEB
- 公開日
- 2025-11-07
- 著者
- 科学文化部