AI活用の認知症早期発見システム、全国100自治体で実証実験開始
会話を通じて認知機能の変化を検出
AIを活用した認知症の早期発見システムの実証実験が7日、全国100の自治体で一斉に開始された。このシステムは、高齢者との日常会話や簡単な質問を通じて、認知機能の変化を検出するもので、医療機関への受診前のスクリーニングツールとして期待されている。
開発したのは、東京大学とIT企業数社による産学連携プロジェクトチーム。システムは、音声認識技術と自然言語処理AIを組み合わせ、会話の内容だけでなく、言葉の選び方、話すスピード、言い淀みのパターンなどを総合的に分析する。過去3万人分の臨床データを学習しており、認知症の初期段階を約85%の精度で検出できるという。
地域包括支援センターで実施
実証実験では、各自治体の地域包括支援センターや公民館に専用のタブレット端末を設置。高齢者は職員との会話を通じて、約15分間のチェックを受ける。結果は即座に表示され、気になる兆候が見られた場合は、医療機関への相談を促す仕組みだ。
参加自治体の一つ、神奈川県横浜市の担当者は「認知症は早期発見・早期対応が重要だが、本人や家族が気づきにくいケースも多い。このシステムで、自然な形でのスクリーニングが可能になる」と期待を寄せる。
将来はスマートフォンアプリ化も視野
プロジェクトリーダーの東京大学・佐藤健一教授は「将来的には、スマートフォンアプリ化して、自宅でセルフチェックできるようにしたい。認知症の早期発見率が向上すれば、進行抑制の治療や生活支援の開始が早まり、本人のQOL(生活の質)向上につながる」と話している。
実証実験は2026年3月まで実施され、その結果を踏まえて2026年度以降の本格導入が検討される。
- 記事提供
- 日本経済新聞
- 公開日
- 2025-11-07
- 著者
- 医療部